映像制作会社へのCG発注

はい本命です。本命なので少々長くなります。
CGを活用した映像(CG動画カット単体ではなく、CGを活用した完成品の映像作品)とはいえ、映像は映像に変わりはないので、映像制作会社に発注するのが一般的です。

昔は映像制作会社というとBtoBの仕事がメインで広告代理店や放送局の下請け的存在だったため一般企業への窓口はありませんでした。しかし今はウェブサイトで相談窓口を開設するなど、多くの映像制作会社が一般企業を対象とした応対をしています。直接依頼しやすい時代になっているので、第一選択肢はまず「映像制作会社に依頼せよ」となると思います。

映像制作会社にCG動画制作を依頼するメリット

何より映像制作会社は映像作品の企画立案から構成、演出、撮影現場の仕切り、編集などポスプロ工程までを管理監督することが本職ですので、映像制作会社がいなければ映像作品を作ることは困難です。
たぶんですがCG制作会社にCG動画完パケ作品の相談を持ち掛けても、結局は企画や予算管理に責任を持つプロデューサーという職種のスタッフやディレクターという演出のためのスタッフも必要になります。こうしたプロデューサーやディレクターという職域のスタッフを抱えているのは映像制作会社なので、CG制作会社も「自社で全部こなすのは無理」と判断して、結局は知り合いの映像制作会社に全体進行を任せるのではないかと予想できます。

CGを活用した映像制作が得意な会社も増えている

特に最近はCGを活用した映像に慣れている会社も多くなっています。昔はCGというと大手企業の広報用映像などにしか使っていなかったので、実際のところ映像制作会社の人間からしても、CGをCG制作会社に対してどう発注していいかも、わかりにくかったのです。
というのも、一般にあまり知られていませんが、実はCGというのは映像の仕事というよりは、デザイナーの仕事として認識されています。人材的には映像とはまったく違う「人種」と思ってもらって間違いありません。ゆえに、お互いに使う言語に共通言語が少ないのです。この「共通言語が無い」というのはプロのお仕事の上では大変困った事態を招きます。

例えばディレクターとカメラマンのように映像の世界の者同士の意思疎通の場合、一から十まで指示を出すことは稀です。お互いに映像制作の現場における共通言語や常識を理解して共有しているため、簡単な言葉の指示だけで、あとは「言わずもがな」で通じてしまうのです。このため時間もかかりませんし、現場で決定的な一瞬を逃す可能性が低くなります。
ところが映像制作者とCG制作者の意思疎通の場合は、映像業界の人とデザイン業界の人ですので、この共通言語や常識が通じないため、精密なコンテが無いとCGの動画を作れないなど、大きな問題があったのです。

最近はCG制作者の側からも、映像のセオリーを理解して動くクリエイターが増えてきました。これは「映像制作者」と「CG制作者」の化学反応が期待できる大変良い状況ですし、顧客の方々にとっても大きなメリットとなるでしょう。

映像制作会社の選び方

では、次に疑問として浮かび上がるのが、「映像制作会社をどう選ぶか?」という問題です。映像制作会社のことを知らなければ製品PR動画を結婚式ビデオ会社に依頼してしまったり、バズらせ動画を医療専門映像制作会社に依頼してしまうといったミスマッチが起きる可能性があります。
というのも、映像制作会社と一口に言ってもピンキリです。ウェブ動画のような予算規模の小さい作品だけ作っているような会社から、それこそ予算規模の大きい映画並みの4KフルCG作品やテレビ番組を作れるような会社まで千差万別です。すべての映像制作会社がフルCGムービーのようなお金がかかる表現方法を使いこなせるわけではないのです。

さらに言うなら、映像制作会社というものには、それぞれに得意分野があります。何から何まで分野を問わず制作することができる会社は少ないと思って良いと思います。というのも、映像の出来はディレクター(監督)次第というところもあり、ディレクターの得意分野がそのまま映像制作会社の得意分野となります。

ですから映像制作会社を探す時は、例えばウェブ検索であれば、工業製品のCG動画制作なら「工業、CG制作、映像制作」などで検索し、医薬品のCG制作なら「医薬品作業機序、CG制作、映像制作」などで検索するなど、具体的に分野のワードを細かく入れながら検索することをお薦めします。こうすることで、作りたい分野・ジャンルの映像が得意で、なおかつCGを扱える映像制作会社が見つかる可能性が高まります。
逆に言えば、得意分野を無視して、「近所の映像制作会社でいいや」というのが一番まずいです。ググりかたとして「映像制作会社 (地域名や都道府県)」のような検索ワードで選ぶと、映像制作会社の得意分野を無視してしまうので、あまり良い結果に結び付かないと思います。
というのも最近読んだ映像マーケティングの本で、「映像制作 東京」のような業種+地域での検索を勧めている本があったので、読みながら「そんな検索方法あるかよ」と毒を吐いたことがあったので、ここで注意を促しておきます。
映像制作会社の探し方は「映像制作 分野/ジャンル」で検索すること。これを鉄則と考えてください。

映像制作会社一覧サイトは使わない

正直、映像制作会社一覧サイトのようなものは、いい加減な情報が多いです。こうした一覧サイトは映像制作の知識がある専門家が作っているわけではありません。ウェブ屋さんが適当に会社を並べただけのサイトが多いので、映像の専門家の目線で見ると「どうしてこの会社がここに掲載されているのか理由がわからない」というものばかりです。実際にご自身で映像制作会社のサイトを眺めて読み込んでみて、専門的な見地から情報公開を行っている会社に絞ったほうが無難です。

責任者から電話をかける

ここまでは検索エンジンでのキーワードについて触れてきましたが、ここからは電話のかけ方と選択基準をいくつかご紹介します。

まず大切なことは責任ある立場の人から電話をかけることです。電話をかける制作会社の候補選びまでは若い子にウェブで検索させてリストアップさせれば良いと思いますが、電話をかけるのは、映像を制作する主体となる責任者が望ましいと思います。
というのも映像の見積を立ててもらうためには詳細な前提条件を制作会社に伝える必要があるのです。聞かれたことに答えられる人でないと、話にならないことがあります。
私の会社にもよく若い子から電話がかかってくるのですが、正直、請ける気が失せます。何を聞いても「えーっと、上司に相談してお返事差し上げます」では、「じゃあその上司とやらがかけてくればいいじゃねえか!」でおしまいです。
もっとも私ども制作者は様々な方々と接して聞き取り調査を普段からしておりますので、相手の会社を見ることは仕事のうちです。当然制作会社探しを若い子に「お前やっとけ」と押し付けているような上司とは仕事をしたくありません。ですので多くの場合、こういう会社さんの仕事をお引き受けすることはまずありません。

制作会社に伝えるべきことは多くはない

また、電話したらプロデューサーや総合演出クラスの人と話をしてください。窓口に出た人にいくら話しても無駄です。これは当たり前のことですが、制作会社に限らず電話を取るのは若い子です。必ずベテランの映像制作現場を理解している担当者とつないでもらってから話をしてください。
それから以下の点を伝えましょう。

  • 作りたい映像の目的
  • 作った映像の公開先
  • 想定される視聴者対象

以上を伝えてみて、どんな映像を作ると良いでしょうか?と意見を求めるのです。

尺は決めずに話す

よく、「〇分の動画を作りたいのですが」と尺を言ってしまうお客様がいますが、〇分と具体的に尺は言わず、「短い動画」「見ごたえのある長めの動画」くらいのニュアンスにして伝えたほうがい良いです。尺というのは編集の後で必然的に決まるものです。テレビ番組のようにフォーマットとしてワクが決まっているなら仕方ありませんが、あまり尺を言うのは制作者側に「そんなに尺長くしたいなら何か内容を足さないとな」と余計な心配をさせます。
ただし、〇分以上はまず見てくれないだろうという目算があるなら、それは伝えてください。特にエレベータープレゼンテーションをタブレットPCでやりたいなどの場合は、その意図を伝えた上で明確に「30秒程度で収めたい」と伝えるべきです。

制作会社は相性で選ぶ

さて、以上のような話をした上で、電話でどんな会話になるか?それをよく記憶にとどめておきましょう。相手からいろいろなアイデアがどんどん出てくるはずです。そのアイデアをメモしておきましょう。面白いアイデアがあれば、その制作会社に決めてしまうのも手です。
たとえアイデアが得られなかったとしても、この段階で、相手の制作会社がどの程度自分が作りたい動画の分野に詳しいかなど基本的な情報はわかるはずです。
そして、直感的に「詳しいな」と感じたり、「こいつアタマいいな」「面白いアイデアを持っているな」と感じた会社に優先的に見積依頼を出すと良いと思います。
要するに制作会社選びは「相性」こそすべてなのです。だから若い子に見積依頼の電話をさせず、責任者が自分で電話をかけるべきなのです。責任者であるあなたと感覚が違う制作会社を選んでもお金を無駄にするだけですし、いくら話し合ったところで時間の無駄です。その会社にはあなたの気に入る映像は作れません。なぜか?フィーリングが合わない、つまりセンスが違うからです。

見積依頼のしかた

見積の依頼は、電話の話の中で出てきたアイデアをそのまま活かして「さっきあなたが言ってたような動画を作った場合の見積が欲しいのですが」という依頼で良いと思います。もちろん「他にも使えそうなアイデアがあったら、そのアイデアごとに見積をぜひください」という一言を付けるのをお忘れなく。

間違っても下手な素人丸出しの「仕様書」なるものを作成して各社に投げて「相見積」を取るようなマネはしないほうが無難です。
仕様書にはクオリティが記載できません。それはクオリティを数値化できないからです。あくまで相手の制作会社のスタッフがどの程度のレベルかを電話で良いので見極めて、「こいつなら変な動画は作らないだろう」という確信を得た上で見積依頼をするべきです。

先にも述べましたが、映像制作会社はピンキリです。学生さんが趣味の映像制作でお小遣いを稼いでいるところもあるのです。例えばテレビや映画に関わるような老舗の本物の映像制作会社が200万円の見積を投げてきて、ある学生主体の会社が10万円の見積を投げてきたとしましょう。その両者が同じクオリティだと思いますか?ですから仕様書を投げて相見積をするようなマネは自殺行為だと断言できますし、相手を見る意味でも最初の電話がとても大切なのです。そしてそこでの会話で得たアイデアやインスピレーションを大切にして、相性で制作会社を選ぶ。これが一番良い方法です。

ライター/奥山正次
映像制作ディレクター/CGクリエイター
1968年東京都出身『あるある大事典』『万物創世記』『スーパーJチャンネル』など有名番組でディレクターを担当。
現在、総合映像プロダクションでありながらCG制作やイラストアニメーションまでを自社で行い、こうした多彩な素材を活用したマーケティング動画やメディカル映像などの制作を行うデキサホールディングス株式会社の代表。
>>参考リンク~デキサHDの公式ウェブサイト