広告代理店へのCG発注

最初にご紹介する窓口の候補は広告代理店です。あなたがもしCMなどを放映しているような大手企業の社員で、広報部などにお勤めで、動画コンテンツ以外にも紙媒体なども含めて総合的に広告戦略を行うなら、この広告代理店の活用は一般的な方法ではないでしょうか?
また、広告代理店とは少し違うのですが、ブランディングを中心とした映像・動画活用のコンサルをしているようなプランニング会社・マーケティング会社も、この広告代理店に準じる会社と考えて良いでしょう。

広告代理店とは何か?

広告代理店はそもそも「枠を販売する会社」です。「枠」とはつまりテレビCMや新聞広告、そしてウェブサイトの広告枠などです。枠の販売をする会社ですから当然自分で映像を作るわけでもありませんし、もちろんCGなど作っていません。広告代理店は枠をテレビ局や新聞社やプロバイダーなどから買ってきては、それを企業向けに販売する、いわば商社なのです。
ではなぜ映像制作などの受注を受けているのでしょう?答えは簡単。枠を売る時に一緒にその枠に乗せるコンテンツの制作も企業からまとめて請け負っているのです。

広告代理店は枠を販売する手数料の他に、このコンテンツ制作費のうち2割~3割程度を営業にかかった手数料として受け取り、映像なら映像の、紙媒体なら紙の制作会社に制作依頼します。
最近では市場をビッグデータ解析し、どのような広告を行えばどういったリアクションが起きるかを客観的に分析する手立てを提供するなど、広告代理店の仕事内容も多岐にわたります。しかしそうしたビッグデータの活用も基本的には「広告枠」を売るためのコンサルティングの一環という理解で間違いありません。

広告代理店へのCG発注のメリット

広告代理店にCG動画を発注するメリットはたくさんあります。以下にそのメリットを列挙してみたいと思います。

①ブランディング手法へのこだわり

まず広告の専門会社ですから「モノを宣伝する」という一点に絞ると、なかなかのアイデアマンがいたりするので様々な意見をもらえる可能性があり頼りになります。
特に、冒頭でも解説したような、「広告代理店というには枠の売上は低いが企業のブランディングを中心に動画や映像による広告戦略をプランニングする」ような、いわゆる「プランニング会社」「マーケティング会社」の場合、第一の会社のミッションが「いかにブランディングして売るか」ということですから、戦略的にもレベルの高いサービスを期待できます。

②紙媒体との連携が得意

また、映像と紙を同時に使う場合などを考えてみると、広告代理店は、その下に映像制作会社も紙媒体の編集プロダクションもぶら下がっていますので、広告代理店が中心となって映像と紙のデザインなどテイストの統一をコントロールすることで、広告の方向性や狙いなどのコーディネートに統一感が生まれます。

③ある種の「無責任さ」が生む企画の面白さ

さらにこれは映像やCGの制作現場から見ていつも感じることですが、広告代理店の担当者にはある種の「無責任さ」があり、それがクライアントにとって良い場合もあるということです。
「場合もある」と書いたのは、メリットにならない場合もあるということですが、広告代理店の人は自分で映像や紙面の実務はしません。広告代理店の内部の人からするといろいろ言いたいことはあると思いますが、基本的に意見を言うだけで何もしていないと思って良いです。しかしこれが逆に顧客にとってはメリットになる場合もあるのです。
例えば、広告代理店はモノ造りの難易度を知りません。だから無責任にも技術的に困難な企画を立ててしまうことがあります。しかし、こうしたある種無責任な意見は限界を考えていないからこそ「面白い」場合があるのです。
面白いだけでは通常ならその企画が映像制作会社に通らないのですが、なにぶん先にご説明した通り、広告代理店は映像制作会社から見るとクライアントですから、無下に断ることもできず、仕方なくではありますが、実現しようと無理やり企画を進めたりします。
こうして出来上がった作品は、いろいろ苦労の痕は見えるものの、よく見ると「面白い」作品になっていたりします。これはこれで大きなメリットでしょう。
ある種の無責任さが生む面白さ。これも狙って使うなら面白いと思います。

広告代理店へのCG発注のデメリット

①割高な中間手数料

逆にデメリットというと2割から3割という高い中間手数料をどう考えるかという点です。
広告代理店側からすると、「いろいろコストがかかるんだから、その位大目に見てくださいよ。今までのお付き合いもあるでしょう?」ということなのでしょう。実際、それは本当にそうだと思います。なぜなら映像制作会社の営業というのは大変なのです。数万円のものを売るのとは訳が違いますし、何がどの程度のクオリティで出来るかわからないものをお客様に数百万円で売るのですから、営業の難易度が高いのです。ですから、映像制作会社の立場からすると、多少手数料を取られたところで「ありがとうございます」ということになるのです。もっとも、その分料金は必要経費としてお客様の懐に請求されています。

②小さい規模では意味が薄い

また、テレビCMなどのような大々的な広報宣伝を行うなら広告代理店も精力的に受け付けてくれるでしょうが、ウェブで動画を流したいという感じの仕事を大手広告代理店に依頼しようとしても門前払いを食らう可能性が高いです。大手になれば億の桁が普通です。数百万円規模の動画広告の市場に彼らが積極的に参入してこないのは、彼らの立派な自社ビルを見れば明らかです。

③クライアントの意図が伝わりにくい

もう一つ、クライアントから実際に制作するスタッフまでの距離が遠くなるデメリットも考えておかなければなりません。実はこのデメリットで悩んでいる大手企業の広報担当者(エンドクライアント)は少なくないのです。
例えばクライアントが何かの製品のウェブPR動画をCGをメインにして作ろうとして広告代理店に相談したとしましょう。その案件が動画だけの場合は、まず映像制作会社に流されます。この段階ですでにクライアントから見れば「孫」の世代になります。さらに映像制作会社からCG制作会社にCG動画パーツの制作依頼が流れます。この段階でCG制作会社は「ひ孫請け」になります。クライアント企業に対する窓口はあくまで元請けの広告代理店ですから、その代理店の担当者にあれやこれやと注文をしたとしても、それが伝言ゲームで伝わっていくうちに元の意図とはまったく違う内容になってしまっていることも少なくありません。
また悪いことに世の中には「仁義」がありますから、川下にいる会社が川上にいる会社をすっ飛ばして直接クライアント企業から聞き取りをするわけにもまいりません。
このようにして「得体のしれないCG」がもれなく出来上がるというわけです。

実際、私もCG制作の立場で作品制作に携わると、こういう事態を経験します。川上にいる映像制作会社のディレクターが、どういうCGを作るべきかわかっていないのです。

上記を理解すれば、数億円をかけて紙やウェブ、そしてテレビCMを含めてトータルにコーディネートするなら広告代理店を使うメリットはあるどころか、広告代理店さんを通しましょう!という意見になりますが、ちょこっとCG動画だけ作るなら、広告代理店を経由させるのはメリットが薄いかもしれませんね。